いよいよ実作業の開始です。美しい仕上がりには手の抜くことのできない工程の「下地調整」。使用する下地によって適した処理方法が異なってきます。ここでは下地別にその処理方法や注意点を解説していきます。
前章の「プロ顔負けのクロス施工[VOL.1 下地の種類編]」も合わせてご覧ください。
Contents
新規プラスターボードの場合
ビスの打込みチェック!!
ボードを固定する際にボードビスを電ドラで打込むのですが、ちゃんと打込んだつもりでもチロっと頭が出てることがよくあります。連続で何十本もビスを打つので必ず何本かは頭が出てる物。プロの現場でもある事なのでセルフリノべの場合はその割合は顕著でしょう。素早く発見する方法としては、パテべらなどでビスを撫でていくと「カツっ」と音がするはずです。音のしたビスは頭が出てます。手回しドライバーでボード表面より少しマイナスになるまで回しましょう。
目地割れを防御!メッシュテープ。
建物は地震や風などで動くもの。特に私が住んでいる宮城県は地震の多い地域なので必須の作業とも言えます。建物が動く際にジョイント部分や開口上部はパテが割れ、クロス表面に亀裂が浮き出る事もあります。そのジョイント部分を補強してくれるのがファイバーテープです。
パテを打つ前にジョイント部分にファイバーテープを貼り付けます。メッシュになっているのでその上がらパテ処理することでジョイント部分にもしっかりパテが充填されます。
コーナー部分はコーナーテープで補強。
室内の出隅は接触が多い部分。石膏ボードのままクロスを巻くと後々凹みや破損が多くなりがち。しかし、パテ処理時にコーナーテープを埋め込むことで出隅の強度が大幅に上がります。
コーナーテープはいくつか種類がありますが、私はロールタイプの両面テープ付きをよく使ってます。両面テープが付いているので施工性が高くパテもキレイに仕上がります。
ロール式のコーナーテープを使う場合は施工前にしっかり折り曲げましょう。折りが弱いとテープが浮いてきて逆にパテ処理の邪魔になってしまいます。
古いクロスを剥離した面の場合
パカパカした裏紙は見逃すな!
既存のクロスを張り替える場合、古いクロスを剥いた上でお好みのクロスを施工します。
古いクロスはキッカケを捕まえれば概ね容易に剥けると思います。その際クロスの裏紙が残る訳ですが基本的にはそのままでOK。
そこでちょっと注意。裏紙がパカパカしてる部分がありませんか?
前の施工時の撫でムラ等で裏紙が浮いてる状態です。そのまま施工するとその部分は残ってしまうので部分的に裏紙も剥離しましょう。剥離部分の段差が大きい場合は後でパテで段差を解消します。
裏紙の浮きがひどい場合
前回の施工時に下地処理が甘かった、海苔が薄かった、撫でつけが甘かった等の理由で密着が甘かった部分が多く、裏紙が浮きまくっている場合もあるかもしれません。そんな時は思い切って裏紙を全部剥がしちゃいましょう。霧吹きで裏紙全体をしっかりと湿らせ10分程度放置します。その後スクレーパーやパテベラでこそぎ取ると面白いように剥がれます。この時スクレーパーで下地まで削らないように気をつけましょう。
大きく剥けたクロスは後で使えるかも!?
クロスを剥く際に状態が良いと大きくキレイに向けることが良くあります。まあ普通に作業を進めていく上ではゴミとなる物ですが、捨てる前にちょっと再利用。
今後進めてく上で、ちょっとした補修やパテの打ち忘れなどで少しだけパテを練りたいシーンが出てくると思います。そこで剥いたクロス登場です。クロスは水を浸透させにくいので、その上でパテを手練りしても大丈夫!練った後はそのまま捨てちゃえば余計な道具を使わずにパテ練りができます。
合板などの木製下地の場合
ビス穴や切断部分のバリにご用心
PBと違い下地のサイズ調整をする際に丸ノコやノコギリで切断するのですが、切り口にバリが残ることが良くあります。良くありますというか必ず出ます。切断後に切り口を丹念にペーパー掛けしてあれば大丈夫なのですがどうしてもバリは残ってしまう物です。同様にビスを打込んだ部分もバリが出ていることがあるので、メッシュテープを貼る前に一度ペーパーで撫でておくと安心です。
数年後に後悔しないためのシーラー処理
木製の下地は数年後アクが出てしまい、クロス表面にシミが浮き出る場合があります。元々合板に含まれたアクが時間をかけて表面に浮き出てくるんですね。パテの前に市販の水性シーラーで表面を保護しておくことで大幅に軽減することが可能です。また、クロスの接着力の向上も見込めますのでマストの工程と言えるでしょう。ちなみに下地がシナ合板の場合はアクが出ないという特徴がありますのでシーラー処理しなくてもOKです!ちょっとコスト高ですけどね。
シーラーはコレで代用もできます!
水性シーラーはホームセンターで手に入るのですが、簡単にいうと成分はボンドを水で希釈したもの。木工ボンドを水で希釈した物でも代用できます。既製品を購入するよりコストは半分程度に抑えられるはず。下地に合板を大量投入する場合に効果的です。
化粧板・プリント合板の場合
ちょっと古い建物にありがちですが、廊下やトイレ、階段部分など化粧ベニヤやプリント合板で仕上げられているケースも多くみられます。シーラー処理したのちに化粧目地をパテ処理してクロスを貼ることも可能ですが、元々のベニヤの厚みが4.5mm〜5.5mm程度と薄いことが多いはず。貼れなくもないのですが動きやすく、後々クロスのジョイント部分が開いたりヨレたりする事も少なくありません。空間にゆとりがあるのであればPBの重ね貼りをオススメします。
砂壁・聚楽など和壁の処理
コチラもシーラーで固めちゃう
和室に多くみられる砂壁や聚楽。このままクロスを貼ることはNGです。「えいっ」と貼れないこともないのですが、後々開いたり剥がれたりとトラブル発生確率は激高です。ここでは2通りの処理方法を紹介します。
①水性シーラーで表面硬化保護
ローラーなどで水性シーラーを全面に塗布し、表面を固めてしまいます。ボロボロ剥がれる事もなくなり作業効率が飛躍的にアップします。シーラーをせずに直接全面パテをするとパテの内部が柔らかいためクロスの仕上がりがとっても不安定になります。
②全剥離(聚楽に限るかなー?砂壁は大変かも)
ヘラやスクレーパーで表面の仕上げ部分を剥離します。意外と簡単に剥がれるのですが、お掃除が大変!脚立の足元には大量もカスが山積みになるのでちょっと萎えてしまう事に。
シーラー分コストがかからないのは②の方法ですが、①の方がスピードは10倍くらい早いです。個人的には①が絶対オススメ!!
仕上げの全面パテ
シーラー処理にせよ全剥離にせよ最終的に全面を仕上げ用パテでパテ処理します。厚みは必要ではなく全体に薄く塗り広げます。左官職人のようにムラなく仕上げることは難しいので、多少のヘラ跡は気にせずビシビシ塗りましょう。ヘラ跡はパテが固まってからペーパーで容易に研ぎ落とせるので心配無用です!
適切な下地処理は美しいクロス施工には欠かせない工程です。この章をよく読んで次のステップに進みましょう。
次回、クロス施工の肝心要のパテ処理編『プロ顔負けのクロス施工[VOL.3 パテ処理編]』ご紹介いたします。